カツ丼とウェブサイトはサクサク作るに限る

はじめに

当初の予定ではイケイケなOSSでイケイケにブログを立てるはずでした。が、当たり前みたいに設定に難航したため、今回はカツ丼に重心を移してお話させていただきます。ブログ編は次回にご期待ください。あと、これはかつ丼氏主催『かつ丼とカレンダー2020 Advent Calendar 2020 - Adventar (https://adventar.org/calendars/5013)』の21日の記事です。

 

 熊本のカツ丼①~おべんとうのヒライ編~

みなさんは「おべんとうのヒライ(注:以下、「ヒライ」とします。)」をご存知でしょうか。ヒライは九州、特に福岡と熊本で広く展開しているお惣菜・定食のチェーンで、あの「ちくわサラダ」発祥のお店らしいとのことです。お手頃な価格と食べ応え充分なボリュームで金のない学生の強い味方となっており、私自身も何度も助けられました。

 

さて、このヒライにはカツ丼のメニューが2つあります。それぞれ、「ザ・かつ丼」と「大江戸カツ丼」と名前が付けられています。なにが「ザ」なのか、なぜ熊本で「大江戸」なのか、そもそも江戸時代にカツ丼なんてあったのかという疑問はヒライでカツ丼を頼んだことのある人なら必ず抱いたことのある疑問でしょう。「ザ・かつ丼」はいたって普通のカツ丼で、丼飯にカツと卵という非常にシンプルな構成です。「大江戸カツ丼」はカツにお出汁の効いた卵とじがかかっており、ここが「大江戸」ポイントと考えてよいでしょう。「大江戸」より「京風」を名乗った方が品があって売れそうに思います。お値段はどちらも500円のワンコインなごちそうですから、仕送りが入った日やゼミの発表の後など、ちょっと特別な日に食べるにはぴったりなカツ丼でした。

 

このカツ丼たちもヒライの例に漏れず、腹の減った男子学生がお腹一杯になるボリュームですから、同時に2種類を食べることはまずできません。では、両方を満遍なく味わおうと思ったときにはどうすればよいでしょうか。もちろん、前回の注文をよく覚えておいて、次回はもう一方を頼まなくてはなりません。しかし不思議なことにカツ丼を頼もうとする度、どうも前回は「 ザ・かつ丼」を食べたような気がしてしまうのです。前来た時は「ザ・かつ丼」だったな、よい今回は「大江戸カツ丼」で江戸を味わおうではないかと意気込んで食券機に500円を投入し迷いなく「大江戸カツ丼」を選択、流れるようにカウンターのおばちゃんへ食券を渡すとそのまま給水機で水を汲んで着席。5分ほど待つと番号が呼ばれ、さあいよいよ久々の大江戸だと喜びも束の間のこと、なんだかこの間嗅いだお出汁の香りがふわりと立ち上ります。またです、またやってしまいました。また「大江戸カツ丼」を連続で注文してしまったのです。これで何回目でしょう、今度こそやらぬと固く誓いながらまたやってしまったのです。決して「大江戸カツ丼」が不味い訳ではないのです。お値段の割にはボリュームもあり、おいしいのです。なのにどうしてこんなに悲しいんでしょう。自身の物覚えの悪さを恨み、せっかく作ってくれたのにテンションが下ってしまった申し訳なさも相まってなんとも切ないカツ丼の思い出でした。

 

熊本のカツ丼②~上通のフィレカツ丼編~

熊本市の中心地はもちろん熊本城下であり、特に「通町筋《とおりちょうすじ》と呼ばれる大きな通りを挟んで西側の「下通《しもとおり》」と東側の「上通《かみとおり》」は多くの人で賑うメインストリートとなっています。「下通」は若者向けのカラオケやブランドのテナントが入り、ちょっと路地を曲れば味のある飲み屋が軒を連ねる賑やかな街で、県下唯一のメロンブックスアニメイトらしんばんがあるのもこの通りです。よく風俗街として名前が上げられていますが、そういうお店は少し奥に入った「中央街」や「ワシントン通り」にあるので「下通=風俗」というのは誤りです。東京でいうと渋谷みたいなもん、とか言ったら怒られそうなのでやめておきます。一方の上通は下通と趣きを異にし、スイーツのSWISS(制服がめっちゃかわいい)、恐らく県下最古の書店の長崎書店が並ぶ落ち着いた雰囲気の通りで、細い路地に入るとそれぞれ個性あるブティックや喫茶店のある大人な街となっています。東京でいうと原宿でしょう。原宿行ったことないけど。僕が一度だけ出会ったフィレカツ丼のお店も上通から路地へ入った先にありました。

 

その日は朝から車校(注:熊本、というか九州では自動車教習所のことを「自動車学校」、略して「車校」と呼びます。どうも地域ごとの教習所が普及した時期によって呼び方がちがうらしいです。)で、教習が終わるともう昼過ぎ。今からでは講義に到底間に合わないからと、いつもはバスで通っている道を歩いて帰っている途中、上通まで差し掛かったときのことでした。どうせなら昼飯もこの辺で済まそうと店を探しつつ、上通から一本三号線側の通りへ入ったときだったと思います。その店はフランス料理(推定)でした。通りに「フィレカツランチ」と看板が出してあり、フィレとはなんぞやとふらふら入店してしまったのです。入店してメニューを探すと紙が一枚カウンターテーブルに置いてあり、メニューはフィレカツしかない旨、カツの枚数で値段が変わる旨、支払いは現金を客が自己申告で壺に放り込んでいく旨が記載されており、読み終わらぬ内に店のおやじが枚数を聞いてくるもんだから、とにかく2枚と伝えて出てきたカツ丼にびっくり。普段食べているヒライのカツ丼と同じ料理とは思えません。丁寧に揚げられたであろう、しっとりとした衣、確かに肉の美味しさのするカツ、ソースではなくタルタルがかかっていて、これがカツとご飯によく合っていたことを覚えています。とにかくおいしかった。お腹が空いていたのであっという間に食べ終わってしまいました。いい店を見つけたぞと満足し、今度の教習の後も寄ろうと決めたのですが、後日記憶を頼りに店を探すも見つからず、結局二度と食べることのできない幻のカツ丼となってしまいました。だれか知ってたら教えてください。

 

おわりに

なんだかどちらも寂しい締め方になってしまいましたが、思い返せば在熊中のカツ丼には色々エピソードがあり、ついこの間のはずなのにとても懐しく感じてしまいます。また早う行ければなと思います、主に下通のお姉さんたちと遊びに。